マッシミリアーノ・アッレグリ【ミラン】の戦術紹介。攻撃と守備の特徴を解説

監督

「美しいサッカーよりも、確実な勝利を。」

セリエAの名門ユヴェントスなどで数々のタイトルを獲得してきた名将、マッシミリアーノ・アッレグリ監督。彼のサッカーは、時に「守備的」「退屈」と評されることもありますが、その根底には「勝利」という結果に対する強いこだわりと、それを実現するための緻密な戦略が隠されています。

この記事では、アッレグリ監督の戦術の奥深さに迫ります。彼の哲学から、具体的な攻撃・守備の特徴までを紐解き、なぜ彼が勝利を掴み続けられるのか、その秘密に迫ります。サッカーに詳しい方はもちろん、戦術は少し難しいと感じている方にもわかりやすく解説していくので、ぜひ最後まで楽しんでくださいね。

マッシミリアーノ・アッレグリの戦術とは?勝利至上主義を貫く哲学

アッレグリ監督の戦術を理解する上で最も大切なキーワードが「勝利至上主義」です。これは、試合内容の美しさやボール支配率の高さよりも、最終的にスコアボードで相手を上回る「勝利」という結果を何よりも重視する考え方です。その哲学は、彼のチーム作りのあらゆる側面に反映されています。

選手の個性を最大限に活かす実用主義

アッレグリ監督の大きな特徴の一つが、特定のシステムや戦術に選手を無理やり当てはめない「実用主義」です。彼はまず、チームにいる選手一人ひとりの能力、個性、コンディションを丁寧に見極めます。そして、その選手たちが最も輝ける組み合わせは何か、どうすればチーム全体の力が最大化されるかを考え、戦術やフォーメーションを組み立てていくのです。

例えば、ドリブルが得意な選手がいれば、その選手が自由に仕掛けられるスペースを作り出します。また、高さと強さを兼ね備えたフォワードがいれば、その選手を活かすためのクロスボールを戦術の中心に据えることもあります。こうした選手起点のチーム作りをすることで、選手は自分の長所を発揮しやすくなり、チーム全体のパフォーマンス向上につながっていくのです。

試合状況で変化する多彩なフォーメーション

「アッレグリ監督の基本フォーメーションは?」と聞かれると、一言で答えるのは難しいかもしれません。彼は試合の状況や相手の戦い方に合わせて、一つの試合中にさえフォーメーションを柔軟に変化させるからです。

基本となる形は「3-5-2」や「4-3-3」など複数ありますが、守備時やリードしている場面では「5-3-2」や「5-4-1」に変化、逆に追いかける展開では攻撃的な選手を投入して前線の枚数を増やしたりと、その采配は非常に多彩です。この柔軟性こそが、相手チームにとっては的が絞りにくく、アッレグリ監督のチームが試合巧者と呼ばれる理由の一つといえるでしょう。

アッレグリの「攻撃」戦術の主な特徴

「守備の達人」というイメージが強いアッレグリ監督ですが、もちろん攻撃にも彼ならではの哲学があります。少ないチャンスを確実にゴールへ結びつける、効率的で鋭い攻撃スタイルが特徴です。

鋭いカウンターを生む「垂直性」

アッレグリ監督の攻撃の代名詞ともいえるのが、ボールを奪ってから素早くゴールに向かうカウンターです。このカウンターの鋭さを生み出しているのが、「垂直性」という意識になります。

「垂直性」という意識は、横パスを入れながらじっくり組み立てるよりも、相手ゴールに一直線に向かうパスやドリブルで前進する動きを優先する考え方です。守備で相手の攻撃を耐え忍び、ボールを奪った瞬間にスイッチを入れ、少ない手数で一気に前線へボールを運びます。相手の守備陣形が整う前に攻め切ることで、決定的なチャンスを生み出すことができるのです。

選手の即興性を重視した崩し

現代サッカーでは、監督がデザインした緻密なパスワークで相手を崩すスタイルが主流の一つです。しかし、アッレグリ監督の攻撃は少し異なります。彼は、ある程度の約束事は決めつつも、攻撃の最終局面(アタッキングサード)では選手のひらめきや個人技、コンビネーションといった「即興性」を非常に重視します。

クリエイティブな選手たちに自由を与えることで、相手の予測を超えるプレーが生まれやすくなります。監督がすべてを管理するのではなく、選手の能力を信じてピッチ上で表現させる。これもまた、選手の個性を活かす彼らしいアプローチといえるのかもしれません。

ターゲットマンを活かすクロス攻撃

前線にフィジカルの強い選手(ターゲットマン)がいる場合、サイドからのクロスボールを攻撃の起点にすることも得意としています。単にボールを放り込むのではなく、ターゲットマンが競り合った後のこぼれ球(セカンドボール)を周りの選手が拾うところまでをセットで考えているのがポイントです。

これはとてもシンプルな攻撃ですが、ターゲットマンがいれば非常に効果的で、ゴール前の攻防で優位に立つための重要な戦術の一つです。

アッレグリの「守備」戦術の主な特徴

アッレグリ監督の真骨頂ともいえるのが、鉄壁の守備組織です。「失点しなければ負けることはない」という考え方をベースに、リスクを最小限に抑え、相手にチャンスを与えないための守備戦術を徹底しています。

堅固なブロックを敷くゾーンディフェンス

アッレグリ監督のチームは、自陣のゴール前に選手たちが集まり、低くてコンパクトなブロックを形成して守ります。これは「ゾーンディフェンス」と呼ばれる守り方で、特定の相手選手をマンツーマンでマークするのではなく、各選手が自分の担当エリアを守るという考え方です。

ディフェンスラインを低くして、選手間の距離を常に近く保つことで、相手がパスを通すためのスペースを徹底的に消していきます。この堅いブロックをこじ開けるのは非常に困難で、多くのチームがアッレグリ監督の守備の前に攻めあぐねてきました。

あえてボールを持たせる戦略的なプレッシング

前線から積極的にボールを奪いに行く「ハイプレス」とは対照的に、アッレグリ監督は相手に意図的にボールを持たせる場面をよく作ります。これは、決して守備をサボっているわけではありません。

相手を自陣に引き込み、攻撃方向を限定されたエリアに誘導し(ボールホルダーへのプレスで片側を切り、空いている方のサイドを2人目が消し、その間を通すパスを3人目が狙い撃つ)、ボールを絡め取るという狙いがあります。闇雲に追いかけるのではなく、相手を罠にはめるような戦略的なプレッシングを行うことで、無駄な体力消費を抑えつつ、効果的なカウンターにつなげることができるのです。

失点しないためのリスク管理術

アッレグリ監督の采配で最も象徴的なのが、試合終盤のゲーム運びです。特に1-0でリードしている状況では、無理に追加点を奪いに行くことはしません。代わりに、守備的な選手を投入したり、ボールをコーナーフラッグ付近でキープして時間を稼いだりと、試合を安全に終わらせるためのリスク管理を徹底します。

このスタイルは「ウーノゼロ(1-0の意味)」と呼ばれ、彼の勝利至上主義を最もよく表しています。ファンにとっては少し物足りなく感じることもあるかもしれませんが、勝利という結果を掴み取るための合理的な選択といえます。

まとめ

アッレグリのサッカーは「勝利」という結果を何よりも重視する、究極の実用主義に基づいています。

選手の個性を最大限に引き出し、試合状況に応じてフォーメーションを巧みに変える柔軟性。ボールを奪えば鋭いカウンターでゴールを陥れ、守備では鉄壁のブロックで決して失点を許さない。そのすべてが、勝利という一つの目的のために緻密に計算されているのです。

もしかしたら、彼の采配は少し地味に映るかもしれません。しかし、その一手一手に隠された意図を読み解こうとすると、サッカー観戦がさらに面白くなるかもしれません。次にアッレグリ監督のチームの試合を観る機会があれば「なぜ今、この選手を代えたのか?」「このフォーメーション変更は何を狙っているのか?」と考えながら観戦するのもおすすめです。

この記事を読んで、「この監督はこんな戦術を使うんだな」とイタリアサッカーの新たな魅力に気付いていただけたなら幸いです。

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